2013年02月16日

歴代カセットテープチャートを振り返る・・・nammyblog vol.18

今回はカセットチャート編に触れてみたいと思います。

カセットテープといえばオランダの電機メーカーであるフィリップス社が、フェライトを素に1962年に開発したオーディオ用磁気記録テープ媒体の規格である。一般的に「カセットテープ」もしくは「アナログカセット」とも呼ばれてますね。
オリコンがカセットチャートを開始したのは過去にも綴っていますが、1974年(昭和49年)の12月2日付から始まりました。
それまでもカセットチャートは1970年の週間、年間でも発表されてますが、具体的な売上本数が明かされてなく、試験的なチャートだったのかと思われます。
カセットチャートと並行して1978年の4/24で終了したカートリッジチャートも存在していた。
カセットの出始めはテープよりもカートリッジのユーザーが多く売上占有も大幅に占めていたが、1975年(昭和50年)にはカセットテープがカートリッジの生産本数を上回りテープ主流の時代が到来するのである。
1960年代後半から著しく性能が向上し、1970年代以後は携帯の容易な音楽用メディアとして広く普及し、手軽な録音媒体としてレコードのダビング、ラジオ番組を録音するチェックなどに幅広く若者に活用された。
カーオーディオの分野においても、先行する8トラックカートリッジ方式に比べて小さなコンパクトカセットはスペースの限られる自動車のダッシュボードにデッキを配置しやすく、メディアが廉価で長時間再生に適することもあり1970年代から1980年代にかけ隆盛を極めた。
ノーマルにメタル、ハイポジション、とても懐かしいですね。

しかし、1982年にCDが誕生し、次第にアナログからデジタルへ移行するとともにカセットテープにも弱点があった。
構造的に頭出し、リピートなどが難しくテープ進行に伴って回転する付属のカウンターで進度を確認するしかなかったが、このカウンターの精度にも中級以上のデッキや機械式では無いフルロジック機構のヘッドホンステレオではテープの音声の有無によって急速頭出しを図る機能もあったが、これはヘッドとテープの強い摩擦を伴い、テープ自体に大きなダメージを与えるものであった。
結果、根本的に解消するのは難しく、1980年代以降CDなどのデジタルオーディオが普及し、安定した高音質やランダムアクセスによる容易な選曲に慣れたユーザーからは、次第に敬遠されるようになった。

まずはカセットテープの調査開始のS43から44年分の生産本数データを載せておく。

◆レコード協会調査によるカセット生産本数推移(単位:千本)

1968年(昭和43年)カセット/631 カートリッジ/5,529
1969年(昭和44年)カセット/1,250 カートリッジ/12,394
1970年(昭和45年)カセット/3,790 カートリッジ/18,338
1971年(昭和46年)カセット/5,837 カートリッジ/14,844
1972年(昭和47年)カセット/6,770 カートリッジ/13,535
1973年(昭和48年)カセット/10,591 カートリッジ/15,606
1974年(昭和49年)カセット/11,154 カートリッジ/12,790
1975年(昭和50年)カセット/14,090 カートリッジ/12,160
1976年(昭和51年)カセット/20,187 カートリッジ/11,388
1977年(昭和52年)カセット/25,612 カートリッジ/9,055
1978年(昭和53年)カセット/34,855 カートリッジ/11,699
1979年(昭和54年)カセット/46,220 カートリッジ/15,087
1980年(昭和55年)カセット/57,107 カートリッジ/22,858
1981年(昭和56年)カセット/60,627 カートリッジ/26,152
1982年(昭和57年)カセット/61,115 カートリッジ/36,489
1983年(昭和58年)カセット/64,618 カートリッジ/33,113
1984年(昭和59年)カセット/60,655 カートリッジ/21,975
1985年(昭和60年)カセット/60,694 カートリッジ/13,826
1986年(昭和61年)カセット/62,517 カートリッジ/8,355
1987年(昭和62年)カセット/68,925 カートリッジ/5,893
1988年(昭和63年)カセット/76,073 カートリッジ/3,415
1989年(平成元年)カセット/72,301 カートリッジ/1,666
1990年(平成2年)カセット/56,541 カートリッジ/672
1991年(平成3年)カセット/44,579 カートリッジ/254
1992年(平成4年)カセット/38,853 カートリッジ/47
1993年(平成5年)カセット/35,333 カートリッジ/4
1994年(平成6年)カセット/29,860
1995年(平成7年)カセット/25,031
1996年(平成8年)カセット/22,512
1997年(平成9年)カセット/22,534
1998年(平成10年)カセット/21,818
1999年(平成11年)カセット/17,608
2000年(平成12年)カセット/17,174
2001年(平成13年)カセット/15,160
2002年(平成14年)カセット/12,972
2003年(平成15年)カセット/11,733
2004年(平成16年)カセット/8,999
2005年(平成17年)カセット/7,425
2006年(平成18年)カセット/6,665
2007年(平成19年)カセット/5,557
2008年(平成20年)カセット/4,586
2009年(平成21年)カセット/3,777
2010年(平成22年)カセット/2,866
2011年(平成23年)カセット/2,104
2012年(平成24年)カセット/1,800

昨年度のテープ生産数は1969年以来の低数値、もはや演歌ジャンルしか現在テープが生産されておらず、1988年のピークを境に右肩下がりなのがわかるだろう。
やはり1979年のソニーが発売したウォークマン効果が大きく同年の79年から生産本数はハイペースで上昇していく。ピークを迎える80年代後期にはソニー、マクセル、TDK、アクシアなどメーカーが廉価な音楽専用シリーズを発売しヒット。
幾度も繰り返しカセットを聴いていたあの頃が懐かしく思う。
CDからテープに録音する際も鉛筆などでテープの頭出しを少し送って透明のテープが途切れる辺りから録音していたものだ。一番初めまで巻き戻した状態で録音すると出だしの部分が途切れてしまうからだ。
カセット世代の人たちもきっとそうしていた事だろう。

さてカセットテープチャートはこれまでずっと公に詳細公表されないままCD、LP、シングル売上のみがスポットを当てられてきたが、2006年に発売された「ALBUM CHART COMPLETE EDITION 1970-2005」で初めてその売上が明らかにされた。
70年代から80年代にかけて功績を収めた歴代カセットチャートをここに記しておく。

カセットテープで国内最も売れたのは1982年12月1日に発売されたマイケル・ジャクソンの「スリラー」。

マイケル・ジャクソン「スリラー」.jpg


レコード、CDとして歴史上最も多くの売り上げを記録した作品で、2008年11月現在のギネス世界記録の認定によれば全世界で6500万枚〜1億400万枚のセールスを記録している。同じくギネスでは最もシングルカットされた作品が多いアルバムとしても認定されている。
ビルボード誌の週間総合アルバムチャートで通算37週の1位を獲得し、サウンドトラックを除くと史上最高記録となっている。サウンドトラックを含めると「南太平洋」(1949年)が通算69週の1位、「ウエスト・サイド物語」(1962年)が通算54週の2位に続いて歴代3位。
日本国内では1983年の年間でLPが6位、カセットが5位、翌年の1984年ではCD、LP、カセットと3部門で年間制覇という快挙を成し遂げた。
オリコンチャートでは1982.12/20に初登場24位、初動売上は0.5万枚であった。ジワジワと売れ続けた要因は多くのシングルカットによる相乗効果。ラジオなどから常に流れるヒットシングルがこのアルバムをロングセラーに結び付けた結果であろう。アルバム収録9曲中6曲がシングルカットという例はまず見たことがない。
しかもその全てが大ヒットするという異例の快挙。
LPチャートで頂点を極めたのは初登場から1984.3/12で65週目にして1位を獲得する。同日付でカセットチャートでも1位を獲得しており7週の1位を記録した。

以下がこれまで売れたカセットチャートである。
カセット単独による編集盤などが続々リリースされ、LPを凌いで売れた作品などもランクインされており、レコードやCDチャートとは一味変わった独特なチャートである。

◆歴代カセットチャート ベスト50
(調査期間:1974.12〜1995.11)
★マークはカセットオリジナル作品

01位 62.5万本 マイケル・ジャクソン/スリラー(1982年)
02位 54.6万本 サザンオールスターズ/バラッド'77〜'82(1982年)
03位 49.9万本 寺尾 聰/リフレクションズ(1981年)
04位 44.0万本 井上陽水/9.5カラット(1984年)
05位 42.8万本 松山千春/起承転結(1979年)
06位 42.2万本 光GENJI/光GENJI(1988年)
07位 40.9万本 松任谷由実/Delight Slight Light KISS(1988年)
08位 39.4万本 大滝詠一/ロング・バケイション(1981年)
09位 39.0万本 サザンオールスターズ/Nude Man(1982年)
10位 38.4万本 アリス/Best 10(1978年★)
11位 37.7万本 中森明菜/メモワール(1983年)
12位 37.6万本 竹内まりや/REQUEST(1987年)
13位 36.5万本 アリス/ベスト・ナウ(1977年★)
14位 36.1万本 美空ひばり/特選集(1989年★)
15位 35.8万本 フリオ・イグレシアス/愛の瞬間(1982年)
16位 35.1万本 サウンドトラック/フラッシュダンス(1983年)
17位 35.0万本 安全地帯/安全地帯W(1985年)
18位 32.5万本 松山千春/起承転結U(1981年)
19位 32.3万本 サウンドトラック/フットルース(1984年)
20位 32.1万本 チェッカーズ/絶対!チェッカーズ(1984年)
21位 32.0万本 サザンオールスターズ/Kamakura(1985年)
22位 31.9万本 ABBA/グレイテスト・ヒッツ Vol.2(1979年)
23位 31.8万本 アラベスク/グレイテスト・ヒッツ(1981年)
24位 30.7万本 小林幸子/ベスト16(1979年)
25位 30.5万本 レベッカ/REBECCA W(1985年)
26位 30.1万本 安全地帯/抱きしめたい(1984年)
27位 30.1万本 中島みゆき/A面コレクション(1982年★)
28位 30.0万本 松任谷由実/LOVE WARS(1989年)
29位 29.9万本 オフコース/BEST NOW(1981年)
30位 29.8万本 中森明菜/バリエーション(1982年)
31位 29.4万本 サザンオールスターズ/人気者で行こう(1984年)
32位 29.2万本 五輪真弓/恋人よ(1980年)
33位 28.5万本 長渕 剛/NEVER CHANGE(1988年)
34位 28.3万本 中島みゆき/寒水魚(1982年)
35位 28.3万本 中島みゆき/マイ・ベスト20(1981年)
36位 28.0万本 チェッカーズ/もっと!チェッカーズ(1984年)
37位 27.9万本 中森明菜/BestU(1988年)
38位 27.7万本 来生たかお/ベスト・コレクション(1982年★)
39位 27.4万本 ワム!/メイク・イット・ビッグ(1984年)
40位 27.1万本 光GENJI/Hi!(1988年)
41位 26.9万本 松田聖子/index(1982年)
42位 26.9万本 サザンオールスターズ/綺麗(1983年)
43位 26.5万本 井上陽水/ザ・井上陽水(1986年★)
44位 26.4万本 松田聖子/plaza(1983年)
45位 26.3万本 中森明菜/ポシビリティ(1984年)
46位 26.2万本 アリス/栄光への脱出(1978年)
47位 26.1万本 荻野目洋子/ノン・ストッパー(1986年)
48位 26.1万本 松田聖子/全曲集(1981年★)
49位 26.0万本 長渕 剛/昭和(1989年)
50位 25.8万本 安全地帯/安全地帯U(1984年)

 
こうしてカセットチャートを見てみると1970年代作品はTOP50内に6作品しかランクインされていませんね。
80年代前期から中期の作品が目白押しです。
ウォークマンの登場を機にカセットの売れ行きが絶好調だったのもわかります。
80年代終盤の作品としてはユーミン、長渕 剛、光GENJIくらいでしょうか。
CD登場によりカセットは録音された既製品を買うというか、カセットはCDを録音するアイテムとして活躍してたんですね。
今はなきカセットチャート。残念ながら栄光のカセットテープ単体でのミリオン作品は生まれなかったが、名作が多いですね。見事にLPのユーザーを分断させたカセットの影響力とその功績は大きい。
posted by nammy at 12:15| Comment(0) | カセットチャート編 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする